AI検索はメディアの敵になるのか?AI Overviewsを巡り米大手出版社がGoogleを提訴した理由

【監修】株式会社ジオコード SEO事業 責任者
栗原 勇一

AI Overviewsの拡大は、Webメディアの訪問者数と広告収益を構造的に減少させる可能性がある——。その危機感を象徴する動きとして、米国の大手出版社がGoogleを提訴しました。今回の訴訟は、単なる著作権侵害にとどまらず、AI時代における検索とメディアの力関係、そして収益構造の変化を問う重要な事例です。

米大手出版社がGoogleを提訴、その中心にあるAI Overviews

提訴したのは米国大手出版社のPenske Media Corporation(PMC)です。「Rolling Stone」「Billboard」など主要メディアを擁する同社は、Google検索に表示されるAI Overviewsが記事コンテンツを無許可で使用しており、著作権を侵害していると主張しています。さらに、AI Overviewsの表示によって検索結果でユーザーの疑問が解決し、Webサイトへ訪問する必要がなくなっている点を問題視しています。

「クリックされない検索」が現実に起きている

Google側も、AI機能の普及によってクリックが減る可能性を示唆してきました。Google検索担当副社長のリズ・リード氏が、簡単な質問ではAIの回答でユーザーが満足してクリックが減少する可能性があるとの見解に触れています。

ただしPMCは、その影響は想定より深刻だと訴えます。訴状によると、同社Webサイトの月間訪問者数は約1億2,000万人いるものの、検索結果の約2割でAI Overviewsが表示され、ユーザーのクリック数が大幅に減少しているといいます。

アフィリエイト収益はピーク時の3分の1以上を喪失

とりわけ打撃が大きいのがアフィリエイト収入です。PMCは、AI Overviewsの拡大によってアフィリエイト収益がピーク時から3分の1以上失われたと報告しています。検索結果で概要が完結すれば、記事本文の閲覧や比較・検討の導線が短くなり、「読まれることで収益化する」モデルが成立しにくくなります。収益の柱がアフィリエイトである企業ほど、影響は直接的です。

「独占的地位」による事実上の強制という主張

PMCは、Googleが米国の検索市場の約9割を占める独占的地位にいることで、出版社がAI Overviewsへの協力を事実上強制されているとも主張しています。出版社側には、無許可利用を受け入れるか、検索結果から除外されるかの選択肢しかなく、検索流入への依存度が高い企業ほど「拒否しづらい構造」になっているという見立てです。

まとめ

PMCの提訴が示しているのは、AI Overviewsが単なる検索機能のアップデートではなく、Webメディアの集客と収益モデルそのものを揺さぶる存在になりつつあるという現実です。無許可利用による著作権侵害の是非に加え、クリック減少による広告・アフィリエイト収益の縮小、さらに検索市場の支配力を背景にした“事実上の選択肢のなさ”が、問題の根深さを強調しています。AI検索が当たり前になるほど、コンテンツを作る側が持続できる収益設計やルール整備は避けて通れません。今回の訴訟がどのような判断を導くのかは、メディアだけでなく、SEO・広告運用・ECを含む広い領域に波及する可能性があるため、今後も注視が必要です。