インフルエンサーマーケティングとは? メリットや実践方法を解説

【監修】株式会社ジオコード Web広告事業 責任者
新井 政樹

「インフルエンサーマーケティングを実施したいけど、誰に依頼すれば良いか分からない」「SNSの媒体選びはどうすればよい?」とお悩みではありませんか。

インフルエンサーの活用は、広告感を抑えて自然に商材の魅力をアピールできる方法として、注目を集めています。

半面、炎上やステマの危険もあるため、適切な依頼人や媒体の選定には細心の注意を払わなくてはいけません。

今回はインフルエンサーマーケティングのメリット・デメリット、各SNSの特徴、具体的な実践方法について紹介します。

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目次

インフルエンサーマーケティングとは

インフルエンサーマーケティングとは、主にSNSで影響力を持つインフルエンサーに自社の製品やサービスの宣伝を依頼するマーケティング施策の一つです。

彼らはユーザーの視点で商材を紹介するため、押し付けがましくなく、自然に人々の興味・関心を惹き付けることが可能です。

インフルエンサーはフォロワーの数によって、100万人超えのメガインフルエンサー、10万人超え〜100万人以下のミドルインフルエンサー、1万人〜10万人以下のミクロインフルエンサーに分けられます。

フォロワーが多ければ、必ずしもマーケティング効果が高いとは限りません。

フォロワーが多いと情報の拡散力を期待できる半面、購入意欲の低い層にもリーチした結果、エンゲージメント率は低くなる傾向があります。

インフルエンサーマーケティングは依頼元の企業ですら想定していなかった盛り上がりを起こす場合もあります。投稿に対するフォロワーの返信、フォロワー同士のコミュニケーションによって、バズりが起きる期待も持てる手法です。

インフルエンサーマーケティングの代表的な手法は「ギフティング」「現地訪問」「商品監修」「アンバサダー」の4つです。

ギフティングはインフルエンサーに商品・サンプルを送付して、体験談やレビューの投稿を依頼する方法です。現地訪問は彼らを店舗やイベントに招待し、実体験に基づく感想を投稿してもらうやり方です。

商品の監修を依頼したり、共同制作・コラボレーションが行われたりするケースもあります。アンバサダーは、長期的なパートナーシップを結び、商品やブランドの魅力を伝える観光大使やPRキャラクターとして活用する方法です。

インフルエンサーマーケティングが注目されている理由

インフルエンサーマーケティングが注目されているのは、消費者の購買行動が変容しつつあるためです。

商品を選ぶ際にネットの口コミや評判を参考にする若者が増え、その際にインフルエンサーの投稿が重視される傾向があります。

店舗に足を運び、その場で購入を決める行動を取ることが減り、欲しい商品がある消費者は、ネットで情報検索を始めるのが一般的です。従来はGoogleやYahoo!などの検索エンジンでリサーチを行うのが基本でしたが、徐々に動画やSNSも情報検索の場となりつつあります。

SNSのユーザー数は年々上昇傾向にあり、年代や性別にかかわらず必要とされているツールです。老若男女問わず、SNSが深く消費者の生活に入り込んだ結果、インフルエンサーの存在感を強めるという結果を生んでいます。

発信内容以前に、情報の発信元が重視される時代です。ユーザーの意図にそぐわないプッシュ型の広告は敬遠されがちで、余りにも宣伝色が強いとブロックされる事態も珍しくありません。

たとえ良い製品でも、一方的で押し付けがましい広告を消費者は嫌います。こうした行動変容を背景に台頭し始めたのがインフルエンサーマーケティングです。

普段フォローしている信頼できる人物や好きな人の投稿なら、自然に受け入れられるでしょう。フォロワーが多く、人々が信頼を寄せているインフルエンサーは、マーケティングの旗振り役として役立ちます。

インフルエンサーマーケティングは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)による拡散を期待できるのも利点です。インフルエンサーの投稿に対するリプライやコメントを意味し、他のユーザーにとって口コミと同等、またはそれ以上の信頼感を提供します。

企業が発する情報では得られないリアルなものなので、消費者は魅力や説得力を感じるでしょう。コスメのインフルエンサーのレビューを参考に、フォロワーたちが投稿したビフォーアフターの写真や動画が反響を生み、ブランドの信頼性向上につながることもあります。

インフルエンサーマーケティングの主なプラットフォーム

インフルエンサーマーケティングの主たるプラットフォームは「YouTube」「Instagram」「twitter」「Facebook」「TikTok」です。各媒体の機能やユーザー層について解説します。

YouTube

動画配信SNSのYouTubeは一度に発する情報量が圧倒的で、投稿者の感情や心情までも視聴者に伝えられます。動画の登場人物に商材の特徴を伝えさせるほか、テロップで補足情報を加えることも可能です。

ガジェットやメイク道具など、実際の使い方を知りたい商材と相性がよく、使ってみた系の動画コンテンツは再生数やいいね数を期待できます。訴求力の強さでいえば、右に出るSNSは存在しないでしょう。

日本におけるYouTubeの利用者数は6,000万人を超え、ユーザー層は10〜50代の幅広い年代に及びます。子供から高齢者までリーチできる守備範囲の広さは、YouTubeを使う大きな利点です。

動画内にリンクを設置でき、商品の魅力を伝えた後で、効果的にLPやECサイトに誘導できるのも特徴です。

YouTubeマーケティングは、細かなターゲティングに適した施策でもあります。ユーザーの登録内容や閲覧履歴などを元に広告を表示するオーディエンスターゲティング、広告の表示先(Webサイトやアプリ)を指定するコンテンツターゲティングが可能です。

Instagram

写真や動画での訴求が中心のInstagramは、ファッションやグルメ、旅行などビジュアル面のアピールに適した商材と相性が良いSNSです。

Instagramの投稿は、通常のフィード投稿と、24時間で非公開制限がかかるストーリー投稿に分かれます。フィード投稿では文章や画像にハッシュタグを添えると、目的を持ってインスタで検索している顕在層にリーチできます。

Instagramは、ストーリーから指定のWebサイトへ直接遷移できる機能が実装されました。Instagramの弱点であった効果測定のしにくさが改善され、よりインフルエンサーマーケティングに活用しやすくなりました。

Instagramマーケティングではショッピング機能の活用がおすすめです。ショッピング機能は写真にブランド名や金額を表示でき、投稿から即座に販売先のサイトへ飛べる機能です。その名のとおり、Instagram経由の購買行動を促進でき、欲しいと感じたユーザーの熱量そのままに行動を喚起できます。

X(旧Twitter)

最大140文字のテキストおよび画像と動画の投稿が可能なX(旧Twitter)は、拡散力に優れたツールです。リポストによってフォロワー以外にもインフルエンサーの投稿がリーチします。

流行っている最新の情報や、天気や交通機関の乱れなどリアルタイムの情報を得る手段としても、活用されています。

他のSNSと比べて伝えられる情報は少ない傾向にありますが、投稿を複数連結するツリー機能もあり、一定の情報量は担保されます。

Xは新機能のリリースが活発なSNSであり、インフルエンサーマーケティングに活用できる機能も少なくありません。音声機能を使って、フォロワー同士で会話できるSpacesが代表的です。

通常投稿の140字では伝えきれないリッチな情報の提供や、活発な議論の場として活用されています。

Facebook

Facebookは実名登録が必須で、大量の顧客データを獲得できることから、SNS広告の出稿を検討する運用担当者もいるのではないでしょうか。

日本での知名度が高いSNSですが、とくに海外でのユーザー数の多さが魅力です。日本以外に向けてマーケティングを行いたいなら、活用しておくべき媒体です。

Facebookのメインユーザーは30〜40代で、ビジネスパーソンが人脈作りに利用する場合も少なくありません。Facebookページ機能を活用して、店舗や企業の情報を掲載しているケースも見受けられます。

インフルエンサーマーケティングでFacebookを検討する際は、他の媒体に比べて、ユーザーの年齢層が高いことに注意が必要です。

TikTok

BGM付きのショートムービーを誰でも手軽に作成・編集できるTikTokは、10〜20代の若者に絶大な人気を誇っています。

特定のテーマにかかわる動画を投稿する「ハッシュタグチャレンジ」は爆発的な拡散力を期待できます。

旗振り役にインフルエンサーを指名し、オリジナルの楽曲や振り付けを広める取り組みを行った企業もあるほどです。

TikTokを活用したインフルエンサーマーケティングでは、ビジネス感を出さないことが重要です。ユーザーの年齢が若く、フレンドリーな投稿が人気の秘訣なので、常識的な大人は求められない傾向があります。

可愛さや親しみやすさを前面に押し出すことが、ユーザーの反応を集めるポイントです。

インフルエンサーマーケティングのメリット

インフルエンサーマーケティングのメリットは非常に多く、これからの時代の主要な宣伝手法だといえます。具体的にどのような利点があるか、解説します。

ユーザーに情報を信頼してもらいやすい

インフルエンサーは特定の分野で成功を収めた人や、豊富な知見を持つ人が多く、情報源として信憑性がある人物です。

推しが勧める商品やサービスなら「我こそは!」と購入したいと考えるファンたちもいます。

実際に彼らがおすすめする商品はよく売れ、発売後すぐ売り切れになる場合も珍しくありません。フォロワーのインフルエンサーに対する信頼は絶大で、投稿の内容も分かりやすく、ユーザーにとって参考になる内容ばかりです。

日頃からファンたちとのコミュニケーションにも積極的で、強固な信頼関係を築いています。広告だけでは効果が見込めなくても、インフルエンサーの信頼力を借りることで、ユーザーの心に刺さるPRが実現するでしょう。

ターゲティングしやすい

インフルエンサーは特定の分野に特化した人物が多く、そのフォロワーもコスメや美容など、あるジャンルに興味を持つ人が多くなります。

自社のターゲットと近しい商材やファン層を持つ人に依頼をかければ、認知拡大や購入促進を期待できます。いくらフォロワー数が多く、影響力がある人物でもPRする商材とマッチしないと効果はさほどありません。

PR投稿も通常投稿に混じって行われ、広告の押し付け感なく、自然な形で訴求できます。

フォロワーの知りたい情報と乖離してしまわぬよう、依頼するインフルエンサーの得意なジャンルと苦手なジャンルを見極めましょう。投稿内容やフォロワーの属性、コメントのやり取りなどを通じて、自社との相性を判断できるため、ターゲティングはしやすいといえます。

口コミの拡散が期待できる

口コミマーケティングと呼ばれる言葉があるほど、実際のレビューは販促の強力なツールです。多くのフォロワーを抱えて影響力も大きなインフルエンサーによる口コミなら、一層効果を期待できます。

影響を及ぼす範囲が広く、たった一つのレビューを呼び水に、何百・何千の口コミを生むことも珍しくありません。スマートフォンの普及と情報化社会の高度化により、ユーザーは常日頃から情報の波に晒されています。

必然的に信憑性が怪しい情報も舞い込むので、本当に正しいものなのか、人々は警戒心を強めています。企業による、メリットだけを訴求した広告に疑いの目が強まる中、第三者によるレビューの重要性が増しているのです。

メリットとデメリットの両方を考慮し、納得のいく商品選びに口コミを活用する人は一定数います。

オンライン販売との相性が良い

インフルエンサーマーケティングは、商品のコンセプトや世界観を伝えるのが重要なD2Cビジネスとの相性が良いと言われています。商材とマッチしたインフルエンサーを起用すれば、成果を期待できるでしょう。

D2C事業はECサイトをはじめ、オンラインチャネルを活用したビジネスモデルです。ターゲット層はZ世代やミレニアル世代が対象となり、多くはSNSでインフルエンサーをフォローしています。

学生の頃からInstagramやXを日常的に使用していた若者たちに訴求したいなら、彼らを活用する余地はあります。

開発から製造、販売まで一気通貫で担うD2Cは、費用対効果が高いビジネスモデルです。インフルエンサーマーケティングの活用によって、さらなる利益率の高さを期待できます。なぜなら、顧客になる可能性が極めて高いユーザーに絞って広告を出すためです。

ファンとの強固な関係性に基づく売買のため、継続率の高さも期待できます。サブスクリプションモデルと組み合わせることで、顧客生涯価値(LTV)の最大化も夢ではない有効な施策です。

データの分析がしやすい

インフルエンサーマーケティングではSNSが主要なプラットフォームのため、データを取得して、容易に分析や改善が可能です。従来のマス広告では消費者アンケートを行わないと正確な効果を測定できず、認知拡大や集客につながるのか曖昧なまま、運用を続けざるを得ませんでした。

各SNSでは、インプレッション数/リーチ数、エンゲージメント率、UGC数(ユーザーが発信したコンテンツの数)などの指標データを容易に取得できます。

リリースしたばかりの商材で認知度の拡大が必要な場合、よりユーザーの目に届くよう、インプレッション数やリーチ数、シェア数などが重要指標です。

一方で購入数や問い合わせ数を増やしたいなら、インフルエンサーの投稿からのエンゲージメント率(サイト遷移数、売上)が鍵を握ります。運用目的でチェックすべき指標は異なるため、まずは施策の方向性を具体的に決めましょう。

商材のイメージがつきやすい

インフルエンサーのような他者からの興味・関心が大きい人物のレビューや使用動画は、ファンたちの「自分ごと化」を促進します。

企業のマーケティング担当が使い方を実践するよりも、具体的なイメージを掴みやすいのが利点です。製品の魅力がよりダイレクトに伝わり、購買意欲を掻き立てます。

憧れの人や好きな人物が使用している姿を見ると、まるで自分自身がその商品を購入し、使っているかのような錯覚を抱きます。

セブンヒッツ理論によると、人は3回接触して初めてブランドを認知し、7回触れることで購入を考えると言われています。投稿の内容はもとより頻度も重要です。インフルエンサーの投稿は人の目に触れる機会が多く、ユーザーの購買意欲を徐々に高める際にも効果的です。

SEOの強化にもつながる

インフルエンサーの投稿にLPやECサイトのリンクを貼ることで、アクセス数の向上だけでなく、良質な被リンクを獲得したとみなされ、検索エンジンからの評価が上昇します。商材の情報を掲載しているWebサイトの検索順位が向上し、SEO対策にも効果があります。

ただしSEO効果を期待できるのは、良質なリンクに限定されることに注意してください。内容の理解に必要で、かつ自然な流れで設置されたリンクであれば、検索エンジンからの評価は悪くなりません。

SEOでは、ユーザーのニーズに沿ったコンテンツを分かりやすく届ける工夫が必要です。しかし、上記のコンテンツSEOは効果が出るまで時間がかかり、制作にかかる人員や工数も考えねばなりません。

インフルエンサーを活用したSEOは即効性があり、手軽に販売網を強化できる魅力的な選択肢です。

インフルエンサーマーケティングのデメリット

インフルエンサーマーケティングは成功すれば大きなリターンを期待できる反面、難易度が高い施策です。良くも悪くもインフルエンサーは、企業が求める行動や投稿とかけ離れた挙動をする恐れがあります。

炎上リスクも抱えており、最悪の場合、かえって商材の評判を悪化させてしまいかねません。インフルエンサーマーケティングの具体的なデメリットを紹介します。

インフルエンサーの選定が難しい

インフルエンサーの選定はプロジェクトの成否を分かつ肝となる工程です。チョイスが適切なら短期間での売上アップや認知拡大の効果を発揮しますが、重要だと分かりつつも、適任者を抜擢できず、集客に結びつかない事例が後を立ちません。

企業がインフルエンサーの選定に失敗する主な理由は、表面的な数字だけで依頼を決めているためです。確かに、いいねやフォロワー数は、彼らの影響力や認知度を推し量る重要な指標です。

しかしいくら数字上で優位性があっても、国籍や性別、年代などフォロワーの属性が、自社のターゲット像と合致しないと意味が薄いものと化します。

ひどい場合、見栄えを良くするためにフォロワーを購入する行為に及ぶインフルエンサーもいます。

インフルエンサー選びでは、フォロワー数のみならず、彼らの得意分野をよく見極めてください。さらに、投稿の雰囲気やフォロワーとのコミュニケーションの取り方にもチェックが必要です。

また、依頼したいと思えるインフルエンサーが見つかっても、相談に応じるかどうかは分かりません。人気のインフルエンサーは多くの企業から依頼を受けるため、リソース的に対応が難しい場合があります。

企業が直接インフルエンサーに依頼したときの返信率は、非常に低いとも言われています。依頼先の選定に時間をかけても、実際に依頼を受けてくれるか分からないのが難しいポイントです。

ステマの炎上リスクがある

宣伝だと気付かれないように商品を宣伝するステルスマーケティング(通称ステマ)には気を付けてください。一般的に不快な行為の一種で、裏切られたと感じたユーザーは怒りを覚えるためです。

自分の意思で購入した人のレビューは信用できますが、企業の依頼を受けた口コミに猜疑心(さいぎしん)を抱く人は少なくありません。場合によっては企業や商材への悪い口コミにつながり、マーケティングが逆効果に終わる、最悪の事態も起こり得ます。

ステマには最大限の注意を払い、投稿には必ず「タイアップタグ(PRタグ)」を付けましょう。ユーザーに宣伝だと伝わるため、負の感情を抱かせずに済みます。

なお、ステマは今後、法規制の対象にされる可能性が極めて高いです。

2022年の12月に消費者庁の有識者検討会が提出したステマの規制に関する報告書では、2023年中を目途に、ステルスマーケティングを景品表示法の不当表示の対象に追加することが決められています。

※参考:消費者庁.ステルスマーケティングに関する検討会報告書. 

高いリテラシーを維持する必要がある

インフルエンサーの投稿は拡散性や影響力に優れる反面、炎上リスクが付きまといます。商材の魅力を訴求しようとするあまり、過剰・誇張表現を使用しないか監視の目を光らせてください。

例えば景品表示法では、競合他社よりその商材が優れていると受け取れる表現は禁止されます。また「No.1」「最高」「最安」などの根拠がない使用もNGです。薬機法にも注意が必要で、医薬品に該当しない美容品やコスメで「シミが消える」「病気が治る」など効果を約束する表現は使ってはいけません。

たとえネタ目的の投稿でも、不快に感じる人が多ければ、ネガティブな情報として拡散します。投稿したインフルエンサーはもちろん、彼らが勧めた商材や企業のイメージも失墜する恐れがあります。

インターネットの情報発信は手軽で多くの人にリーチする反面、悪い噂も瞬く間に広がります。一度拡散した情報の流布を止めるのは難しく、デジタルタトゥーとして消えない傷が残ることになりかねません。一つひとつの投稿は丁寧に作成し、適切なチェック体制も取り入れたうえで万全な運用を期する必要があります。

発信内容のコントロールが難しいケースもある

企業側はインフルエンサーに商材の魅力を存分に伝えてほしいと思うのが通常です。しかし、要求が多すぎると投稿の自由度がなくなり、個性や魅力が失われる場合もあります。インフルエンサーに裁量を持たせて、管理レベルを意図的に和らげることも考えましょう。

また、彼らは必ずしも商材の良い部分を伝えてくれるとは限りません。相性が悪く、正直なレビューを投稿した結果、悪い部分が拡散されるリスクもあります。

インフルエンサーマーケティングを行う上でのポイント

インフルエンサーマーケティングの重要なポイントは、ブランドや商材との親和性です。発信しているジャンルは同じでも、世界観や人となりなどの「味」は人それぞれです。

発信内容(投稿の頻度・質・フォーマット)やエンゲージメント率のほか、コメントの内容にも気を配りましょう。ユーザーとの距離感を推測でき、ファンとの距離が近いインフルエンサーに依頼すれば、高い訴求力を期待できます。信頼関係を構築している間柄なので、企業が直接接触を図るよりも購買につながる可能性が高いです。

積極的にコメントを投げかけるファンの年代や性別が分かれば、本当に商材のアンバサダーに適しているか高精度の判断が可能です。

また、インフルエンサー自体に興味があるのか、彼らが発信している情報に喚起されているのかという点もポイント。

前者の場合、PR役に任命しても、ユーザーの関心は商材よりも本人に向いてしまい、宣伝効果は期待できません。コメントの内容が発信内容に関するもの、例えば「どこで買ったのですか?」「オシャレな帽子ですね」などであると、依頼先には適切だといえます。

多くのWeb施策と同様、具体的な運用目的の設定が重要です。インフルエンサーマーケティングの目的が認知拡大か、または購買の促進かによって施策の方向性や具体策は異なります。

認知拡大の場合、何よりも優先すべきは多くの人の目に触れさせることです。専門知識に特化し、業界では一目置かれていても、フォロワー数が多くはないマクロインフルエンサーはおすすめできません。また、認知拡大を図るフェーズでは、できるだけ多くのインフルエンサーたちに声をかけることが大切です。

複数人のメガ〜ミドルインフルエンサーに依頼し、拡散を図るのが効果的です。逆に購買の促進を狙うなら、自社のニーズとマッチしたコアなファンを持つミクロインフルエンサーへの依頼も検討しましょう。

施策の目的にあわせて、適切なKPIを設定することも重要です。効果測定を行い、PDCAサイクルに基づく改善が必要となります。

認知拡大の場合はリーチ数や動画再生数、UGC数などが特徴です。興味関心を獲得したいならいいね数、動画視聴完了数、コメント数、フォロワー数、URLクリック数などが適切な指標です。

指標の設定を誤ると、効果的な分析につながらず、施策の判定ができません。必ずインフルエンサー施策の実施目的を考え、指標を選定してください。

インフルエンサーマーケティングの勘所ともいえる依頼先の選定において、意識したいポイントは次の通りです。

  • 平均エンゲージメント率の数字は良好か
  • 過去のPR投稿の内容は自社のニーズとマッチしているか
  • 過去のPR投稿のエンゲージメント率は良好か

通常投稿のリーチ、いいね、シェア、コメント、保存数などの数値から、平均エンゲージメント数/率を算出します。この数字が高ければ高いほど多くの人の興味や関心を高め、行動につなげられたと判断できます。

また、インフルエンサーマーケティングを講じた際の想定効果の試算にも使えます。エンゲージメント率の高さはファンとの良好な関係性を示す指標です。フォロワー数だけでなく、多くの反応を得られているインフルエンサーを活用しましょう。

過去のPR投稿のチェックも重要です。ブランドの世界観とマッチするか、投稿は丁寧で内容の質は高いか、商材の魅力が惹き出されているか、などを確認しましょう。

過去の投稿を確認することで、ステルスマーケティングを行っていないか、ハッシュタグの選定は適切かなどの判断にも役立ちます。商材の宣伝にふさわしい存在か確認できます。

過去の投稿でも、エンゲージメント数やエンゲージメント率の確認が必要です。宣伝を依頼した際に効果が出るかどうか判断に役立つ、よりダイレクトな指標です。

確認すべき指標は通常投稿のエンゲージメント率/数と変わりませんが、目的が同じ分、より信頼できる指標です。一般的にPR投稿は宣伝色が出てしまうため、通常の投稿と比較して、エンゲージメント率は悪化します。

しかし、普段の投稿よりPR投稿のほうが高い数値をたたき出すインフルエンサーも存在します。商材理解力や商品訴求力に優れている証なので、積極的に依頼を出すと良いでしょう。

インフルエンサーマーケティングの実践方法

インフルエンサーマーケティングの実践方法は「専門会社への依頼」「広告代理店の活用」「ダイレクトリクルーティング」です。それぞれのメリットや注意点を解説します。

インフルエンサーマーケティング会社に依頼する

インフルエンサーマーケティング会社の存在をご存じですか。キャスティングから投稿のディレクションまで一任できる対応の幅広さが魅力です。

多方面のジャンルで活躍する多くのインフルエンサーが所属しており、自社にマッチする依頼先を見つけやすいのが利点です。

目的に沿った施策の立案、過去の実績を踏まえて成果が出せるインフルエンサーの提案、交渉や報酬の支払いの代行、サンプリング品の個別発送など、きめ細やかで包括的な支援を受けられます。

注意点はキャスティングサービスのマージンが発生することです。ステマ防止や炎上対策も対応しており、自社にインフルエンサーマーケティングの専門人材やノウハウが不足している時に役立ちます。

広告代理店に依頼する

インフルエンサーマーケティングの運用も担う、広告代理店に依頼をかけるのも一つの手段です。

施策の立案からキャスティング、効果測定まで担うディレクション型と、プラットフォームに登録したインフルエンサーから代理店が適任者をピックアップするプラットフォーム型に分かれます。

ディレクション型はインフルエンサーマーケティング会社と同様のサービス内容であり、運用経験がない会社や、自社にノウハウが蓄積されていないケースにおすすめです。

インフルエンサーにはマネジメント事務所に所属する知名度や実績がある人を抜擢します。ディレクションも行うため、費用が高い傾向があります。

一方である程度自社でまかなうプラットフォーム型なら、コストを抑えることが可能です。アサインの方法は公募型と指名型の二種類があります。登録済みのインフルエンサーの中から適した人材を自社で見つける必要があるため、人材の選定に時間を要するのは否定できません。

直接インフルエンサーに依頼する

SNSのDMやブログの問い合わせフォームなどを通じて、直接インフルエンサーにコンタクトを図るのも一つの方法です。

仲介者を通さない手法のため、プラットフォームに手数料を払わずに済み、スピーディーに企画〜投稿まで実現しやすいのが利点です。

ただ確実に返信が来る保証はないことと、インフルエンサーとのすり合わせが上手くいかない可能性があります。ブランディングや世界観を大切にしている傾向があり、商材の雰囲気やニーズとマッチしないと、企業の希望にそぐわない残念な投稿に終わる場合もあるようです。

費用はフォロワー数に単価を乗じて決定します。たとえばXのフォロワー数が5万人のインフルエンサーに文字単価2円で依頼したときのコストは10万円です。依頼先の影響力や拡散力が大きいほど、単価や総報酬額が増えるシンプルな仕組みです。

インフルエンサーマーケティングの成功事例

インフルエンサーマーケティングの成功事例を、媒体ごとに紹介します。依頼するインフルエンサーのキャラクターにかかわらず効果的な取り組みを中心に解説します。

Instagramの成功事例

ホテル予約サイト「Booking.com」は公式アカウントのキャンペーン情報を、旅行系のインフルエンサーたちに拡散を依頼し、認知拡大に成功しました。

引用リツイートの形式で、抽選2名に10万円分の宿泊券をプレゼントする「夢旅館旅プロジェクト」が多くのフォロワーに届けられました。

旅行系インフルエンサーの支持者たちは旅情報にアンテナを張っている人ばかりです。拡散が拡散を生んだ参考にしたい事例です。

Instagramの成功事例

子供用トイカメラの宣伝を、Instagramで活動する子育て系のインフルエンサーに依頼した事例です。ストーリーズに10%オフクーポンを掲載することで、購買意欲を高める工夫が施されています。

特典には直接購入につなげるほか、ユーザーの投稿を通じた拡散も期待されます。インフルエンサーの選定ではフォロワー以外に、平均保存数や平均リーチ数、男女比率なども考慮したのが成功の秘訣です。

新規商品のプロモーションを展開しているなら、ぜひ参考にしてください。

YouTubeの成功事例

YouTubeのインフルエンサーでとくに有名な人物はヒカキンさんです。コンテンツの企画力に優れ、ユニクロのような有名企業とのタイアップ案件も数多くこなしています。

企画の独自性や動画のユニークさが好評を博し、子供から大人まで幅広い層から支持を得ています。宣伝だと分かるとユーザーに敬遠されるため、PR投稿は通常の投稿と比べて、閲覧数や反応数が下がる傾向があります。

だからこそ重要なのが、依頼するインフルエンサーの企画力です。タイアップ動画の経験が豊富なYoutuberは、社内にインフルエンサーマーケティングの知見がない、またはノウハウが不足していても、アドバイザーとして頼れる存在でもあります。

Facebookの成功事例

Facebookのインフルエンサーマーケティングで参考にしたいのが、大塚薬品の戦略や投稿です。

プロバスケットボールチーム「鹿児島レブナイズ」とパートナー契約を結び、温浴施設での活動の様子を提供しています。スポーツ選手とスポーツドリンクの相性の良さから、爽やかな印象を受け、企業や商品のイメージアップが実現したようです。

商材のPRに加えて自社の取り組みの宣伝にもなり、上手に運用されています。スポーツの日やドライバーの日など記念日にまつわる投稿が多く、2〜3日に一度の定期的な投稿や、限定プレゼントキャンペーンの実施など積極的な活用が目立ちます。

TikTokの成功事例

ジェンダーレスコスメブランド「SUORUM」は、メガインフルエンサーのルイスさんを起用したインフルエンサーマーケティングを実施。

寝ているルイスさんに化粧を施し、気付かず外出した彼が洋服を買っている最中に、化粧に気付くという内容です。カップルの日常を切り取って、親近感を出しながら男性がメイクをする魅力を伝えています。

ECサイトの成功事例

ナチュラル素肌を応援する美容スキンケアブランド「ビオメディ」は、アンバサダーを活用して、ECサイトへの集客につなげた事例です。Instagramではブログのように投稿の一部に誘導したいリンクを設定できず、基本的にECサイトの集客には適していません。

Instagramの集客はタグ付けやメンションで企業アカウントへ誘導する、ストーリーズ投稿に自社サイトのURLを入れるという一見、地味な手法に限られます。

しかし、ビオメディはInstagramの特性である写真と動画の訴求性の強さによって、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を集めることに成功しています。

美容系インフルエンサーの投稿は、見ているユーザーからの共感を得られるよう、画像を最大限に使い、投稿内容に工夫がみられるのが特徴です。こうしたインフルエンサーをECサイト上で募集し、顕在的な顧客の興味関心を集めることに成功しました。

地方自治体の成功事例

SNSで旅行先の情報を検索する動きが盛んになった今、地方自治体がインフルエンサーと連携するケースも増えています。

出身地域のインフルエンサーを観光大使に任命したり、地元の観光スポットやツアーに観光大使を案内したりといった方法が取られています。

地域の魅力や伝統を影響力のある人に発信してもらうことで、街を訪れる人は増えるでしょう。伊勢原観光協会は旅行系Youtuberのスーツ旅行さんを起用して、秋の大山キャンペーンを実施しました。

小田急ロマンスカー内の移動の様子や、宿坊体験の工程を動画で発信し、独特の言葉で風景や街並み、料理などの魅力を存分に伝えています。電車やバスの中からの景色はチラシやパンフレットでは分からない内容なので、視聴者にとって大変有益です。

数十分の長い尺の動画にもかかわらず飽きさせない工夫が満載で、再生回数も伸びています。

アパレル業界の成功事例

アパレル業界はインフルエンサーマーケティングとの相性が良く、多くの企業がこぞって導入しています。

服を購入する際は、デザインや色合いのほか、サイズ感や着回しも重要です。実際にお店に行く時間がない、ネットですべて完結したいと希望する人たちが、ファッション系インフルエンサーの着こなしを参考にするケースは多々あります。

ユニクロは様々なインフルエンサーを活用し、マーケティングに活用しています。なかでも秀逸なのが元アパレル店員mau.さんの事例です。全身をユニクロで固めたコーデをリール動画で披露し、フォロワーから多数のコメントが寄せられました。

全身コーディネートによって商品の魅力や着回しが深く伝わります。

飲食業界の成功事例

レストランやカフェは画像や動画による訴求との相性がよく、SNSをプラットフォームとしたインフルエンサーマーケティングを手がける企業が少なくありません。

コロナ禍による外出自粛の中、宅配フードサービスや飲食業のブランディングにも活用の幅が広がっています。

商品の魅力や感想を影響力のある人物の生の声として広められるほか、商品の受け取り時の感想も共有できるのが利点です。

冷凍食品やレトルト食品、缶詰などで知られるマルハニチロは、大食い系Youtuber木下ゆうかさんとのタイアップ動画を公開しています。

PR動画の内容は冷凍食品「王様のソテーピラフ」の20人前・計5kgを一人で食べるという内容です。食べて感想を述べるだけでなく、オリジナルのチーズソースを使ったアレンジレシピも紹介し、ユーザーの参考となる動画を公開。

動画の最後には製品のプレゼント紹介および公式サイトへの導入も織り交ぜ、PR動画として上質な内容でした。大食い系の動画はインパクトが非常に大きく、依頼するYoutuberはおいしそうに食べるので、高い宣伝効果を期待できます。

コスメ業界の成功事例

アンファー株式会社の男性向け頭皮ケアブランド「スカルプD」は、女性の美容系インフルエンサーを起用して話題を集めました。

コスメの紹介をはじめ、ファッションやトレーニング、フィットネスなど幅広い分野で発信力がある人物です。メンズ用の美容製品でも影響力のある女性にレビューを依頼すると、効果的な場合があります。

なぜなら女性インフルエンサーのなかには、男性ファンが多い方もいるためです。「男性でも頭皮や肌のケアをきちんとする人は印象が良い」というメッセージが、彼女のファンたちに響く場合があります。

場合によっては、メンズ向けの製品を女性に、あるいは女性向けの製品では男性に宣伝を依頼する選択肢を持っていると、PRの幅が広がります。いずれにせよ、フォロワーの属性は精査する必要があります。

商材のターゲットとなるユーザーが本当に存在するか確かめ、相性を探りましょう。

旅行業界の成功事例

日本のLCC(格安航空会社)である春秋航空日本は、毎日ラーメンを食べる生活の様子を投稿しているラーメン系Youtuberを起用しました。

タイアップ動画は、佐賀から福岡にかけた二泊三日のラーメン食べ歩きツアーの様子を投稿するというもの。テレビ番組にも引けを取らない編集力の高さや、登場人物たちの軽快なトークが評判で、非常に完成度が高い作りになっています。

ラーメンに限らずご当地グルメは旅行の醍醐味の一つです。丁寧かつ魅力的なコンテンツを制作できるグルメ系インフルエンサーとタッグを組めれば、有意義な宣伝が実現するでしょう。

旅行業界なら一人旅の様子を配信するYoutuberや、Vlogで人気がある人物を起用したくなりますが、切り口を変えてグルメに焦点を当てることで、ブランディングや差別化につながります。

番外編:漫画の成功事例

漫画家に商材の特徴や使い方に関する漫画を書いてもらい、拡散につなげた事例も多々あります。たとえばtwitterで人気を博すエッセイ漫画家のやしろあずきさんが「スタバで見た小学生たちの話」という漫画を投稿したときは、大変話題になりました。

漫画コンテンツの人気は甚だしく、漫画形式のXやInstagramの投稿が何千ものいいね・RTを集めるケースも珍しくなくなってきてます。

日常を切り取った四コマ漫画や、ヒーローものなど漫画には共感が集まりやすいコンテンツです。そのうえ文字を読む感覚がなく、負担が少ないため、記憶に定着しやすいのが特徴です。

エンタメ性に優れるだけでなく、ユーザーの行動にもつながる一石二鳥の手法として、にわかに注目を集めています。

まとめ

インフルエンサーマーケティングで成果を出すには、他のWeb広告施策と同様、適切なKPIの設定が重要です。

認知拡大が目的なら動画の再生数やインプレッション数、購買促進が狙いならエンゲージメント率というように、達成したい成果に合わせた目標値の選定が必要になります。

ジオコードはリスティング広告や各SNS広告などの運用代行を15年以上も手がけてきたWebマーケティングの老舗企業です。

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